トマス・バス,「マネーゲームの予言者たち」

今日の記事は、とある人に捧げます。

「非定常性は、単一の動物ではなく、むしろ雑多な動物が集まった動物園である」多数の研究論文の中でも社外秘とされたものに、ドアンは記している。結論としては、この問題を切り抜けるための最善の道は、「モデル集合」を構築して非定常的なターゲットを柔軟にとらえることである。たとえば、プレディクション社の為替モデルでは、じつに三十二のサブシステムを組み合わせている。「並行予測」の原則どおりに働き、「投票」したものを踏まえて、買いや売りの判断を下すのだ。


「市場にかんする根源的な真理の一つに、市場の力学は非定常的だということがある」ノーマンが説明する。「安定した統計的性質をもつアトラクターの存在を示す証拠は、見当らない。それがカオスの特徴なのだから、ぼくらがみているのはカオスじゃない。なにかほかのものだ。ストレンジ・アトラクターよりもさらにストレンジなアトラクター、とでも言おうか。実のところ、アトラクターでもなんでもないのかもしれない。


市場には、構造としてのまとまりや、統計上は定常的なパターンを示す時期もある。だけどそれは、いつかは消滅してしまう。構造という雲は、浮かんでは消える。プレディクション社の仕事は、こうした構造のかけらを---なるだけ強力なシグナルを発し、長持ちするやつを---みつけることなんだ。この構造がいつ現れ、いつ消えるのかが知りたい---消えてしまうものに賭けたくはないから。

いまあるのは、この凝縮する構造の曖昧なイメージだけだ。統計学モデリング力学系といった分野で研究が確立したものじゃない。まだ名前もない---ストレンジ・アトラクターよりさらにストレンジなアトラクター、という以外は。"移行または消滅するカオス"も悪くないけど、この呼び方は矛盾してるね。カオスについての根源的な真理の一つが、不変測度というものがあること。安定した統計学的特性で、カオス的なアトラクターを特徴づけるものだ。だから、この、よりストレンジな系と、カオスのようによく知られた数学的特性とを結び付けないほうがいい。この系には、まだ定理もモデルもない。数学的には未知の領域なんだ。」

トマス・バス,「マネーゲームの予言者たち」 より。



20年近く昔の物語らしいですが、この一節に魅かれます。実際のプレディクション社のHPには特に情報はありません..。
本題とは関係ないけれど、MQL4でフラクタルな何かを追求している人のブログが http://fractalfinance.blogspot.com/ にありました。こちらは興味があればどうぞ。