私的ランダムウォーク観

最近、とあるサイトで「FXはゼロサムで丁半博打だからやる意味が無い。株や投信はプラスサムだから価値がある。」なんて主旨の記事を見たのだけれど…、
私には株や投信もキャピタルゲイン(価格差益)を目的とする限りゼロサムだと思ってます。株がプラスサムに見えてしまうのは、「社会が発展し経済規模は拡大し続ける」と暗黙のうちに仮定しているからであって、(実際、世界規模ではまだまだ拡大し続けるでしょうけど…)、いつか、永遠に続く不況が始まれば誰もプラスサムだと思わなくなりますよ。


そもそも、株がプラスサムだと信じている人は、安値で買った株を高値で売った時、高値で買ってくれた人に対してどう思っているのでしょうか?
「良い買い物をしましたね。この株はもっと上がりますよ!」…なんて考えていたら、それは合理的な投資家では無いですよね。本気で値上がりすると思っているのなら、売らずに持ち続けるべきですもん。
「高値掴み、、お疲れさん...。フヒヒ」と心の中でつぶやく方が下品だけど、まだ自然じゃないのかなぁ…。(コラ
(本来の”投資”のあるべき姿は、株を買って配当をもらうことだと思ってます。それ以外は全部、投機=ゼロサムですわ。



閑話休題



そんな株の話はさておき、私自身はFXはゼロサムと割り切ってトレードしています。これが丁半博打と異なるのは、値動きに確率的な歪み=収益機会が残っているからです。
具体的な収益機会の探し方は省略しますが、「値動きには○○という性質がある」と仮定し、その仮定に統計的な妥当性があるのかどうか?検定し、仮にその性質があるとしたら、どのようなアプローチが尤も合理的であるのか?延々と考え続けています。
その思考プロセスの中では、当然、市場はランダムウォークしているかどうか?もいつも気になります。



純粋に価格の時系列データだけを観察する立場では、サブプライム問題、ギリシャ問題から、経済指標発表、要人発言まで、さまざまな経済イベント(経済現象)は、予測不可能です。

↑予測不可能なイベントが、適正価格を変えてゆくとしたら、その価格は常に、上がるか下がるか予測できませんから、ランダムウォークと同じ扱いになります。
価格以外の情報(ファンダメンタル分析、インサイダー情報、その他)を取り込めば、黒丸の価格の動きは予測可能になることもあり得ます。
明日10時から日銀が円売り介入するよー! と聞けば、誰だって円安に動くと予測できますからね。




ファンダメンタル分析は、その再現性・正確性を評価できないというか、私には会得できる自信が無いので、
黒丸がランダムに動いている状況で利益を得るには、小さなタイムフレームで売買するしかありません。

↑青丸で買い、赤丸で売れば儲かります。(黒丸の動き自体はランダムウォークしているにもかかわらず!)


このような収益機会に対して、市場が効率化されてゆくと、ほぼ瞬間的に適正価格に変化するようになるはずです。
価格が上がると分かった時点で誰もが同時に一瞬で買ってしまうイメージです。

↑効率化された市場でのチャートは凸凹になると予想。
斜めの緩やかなトレンドが、数分、数秒、数ミリ秒…と短い時間で終わってしまいます。
こういう世界になると、専用サーバ、専用回線で、ミリ秒単位のトレードができる機関投資家だけが利益をあげられるのでしょう。
個人が逆指値ブレイクアウト戦術をとっても、約定価格は上昇後の適正価格へ滑ってしまい利益がでなくなるのです。



実際のチャートをみてみると・・・

↑この観測スケールでは、ある程度の効率化が進んでいる?!
…なんて感じます。



現実の市場では、瞬時に変化した適正価格を知る手段がありません。
適正価格に対して買われすぎ、売られすぎの往復運動を繰り返しつつ、大きな時間スケールでのランダムウォークに追従すると考えたのが下図の緑ラインです。

↑私の中での相場の値動きのイメージです。
相場がランダムウォークしているとの主張を認めつつ、同時に収益機会が溢れている現状を説明するには、こんなイメージなのかな・・・と思ってます。


こう考えると、値動きだけを元にトレードシステムを作る場合、ランダムウォークしている黒丸に対して、周期性などの法則をみつけようとしたり、カーブフィットさせてしまうと、悉く失敗することになります。
逆に、ランダムウォークではない定常的な部分へのフィッティングは積極的に行った方が望ましいはずです。
直近のデータにフィットさせる手法が上手くいくかどうかは、値動きのどんな性質にフィットさせているか?次第になるのでしょう。(おわり


補足


一般にランダムウォークというと、
Tick単位でランダムウォークした結果、1分足、5分足、1時間足、日足・・・と、どの時間足でもランダムウォークしているイメージだと思います。その場合は、上図のように、どのスケールでデータを取り出してもランダムウォークしていることになります。
実際は、たとえば1時間足以上のスケールではランダムウォークと同じ性質を示すが、それより小さなスケールではランダムウォークではない・・・という主張を、経済物理学の本などに見ることができます。