EMAの意味するところ…(2)


私の相場感は前回書いたとおりで、価格の均衡点を推定する為に移動平均にはめちゃめちゃこだわっているんですよ。^^;
当然、移動平均の経済的な意味も考えた時期があります。



まず、単純移動平均の意味は単純明快です。

今日 1日前 2日前 3日前 ... 9日前
購入価格 110円 109円 108円 107円 ... 101円
保有人数 100人 100人 100人 100人 ... 100人

毎日100人のトレーダーがドル円を1単位ずつ10日間買い続けた場合、彼ら100人x10日 = 1000人の保有ポジションの平均購入単価が、単純移動平均で求まります。



…でも、もし9日前に101円で買った最初の100人のうちの何人かが既に利食いで売ってしまっていたら??
仮に自分が101円で買っていたら、105円や110円になった時点で売っているはずでは?と、疑問を持つのは自然な流れでしょう。
(これは本質的に確認不可能な命題なので、「自分だけの現実」 に気づくって感じでしょうか。。


このようにして、保有ポジションの一部が解消されていることを想定すると、当然、残りの保有ポジションの平均購入単価の計算式は変わってきます。

今日 1日前 2日前 3日前 ... 9日前
購入価格 110円 109円 108円 107円 ... 101円
保有人数 100人 90人 80人 70人 ... 10人

毎日100人のうちの10人が売却していった場合の残りの保有ポジションの平均購入単価は、線形加重移動平均値になります。

今日 1日前 2日前 3日前 ... 9日前
購入価格 110円 109円 108円 107円 ... 101円
保有人数 100人 80人 64人 51人 ... 13人

毎日一定の確率(例えば2割)で全保有者が売却していた場合の残りの保有ポジションの平均購入単価は、指数移動平均(EMA)に近づきます。無理やり EMA に意味づけするとこんな感じとなり、その他のいくつかの移動平均も、過去の保有ポジション分布が特殊な場合の平均購入単価と見なす事ができます。


移動平均(..と呼んで良いのか分からないのですが..)の中には、高値を超えた価格を付けるものもあるので、さすがにこれにどんな意味があるのかは分かりません。^^;

↑これを見て、相場の周期変動が手に取るように分かる!!と考えるのは危険です。かなりの確率で入力パラメータ依存の人為的な周期を見ている可能性があります..。パラメータに20期間を指定したから、20周期の動きが強調されてしまうといった感じです。


それはさておき、現実世界では、どの移動平均が妥当なモデルなのかは分かりません。毎日同じだけ買われるという設定も考えにくいし、出来高に比例配分した平均が良いのかもしれません。そもそも、一部塩漬けされた保有ポジションの平均購入単価を求めても意味が無くて、アクティブなトレーダーが割高と感じるか、割安と感じるかの境界となる価格が知りたいのです。


実務的な立場からは、数式の意味はどうでもよいのでブラックボックス扱いして、計算結果が自分の求めたい値に近いのか統計的に検証すればよいと思ってます。移動平均の各種パラメータは、市場の変化に合わせて常に変更してゆく必要があって、パラメータの変更に対して計算結果がスムーズに変わる計算式が扱いやすくなります。


そういう観点でみると、JMA や NonLagMA は、急な価格変化に追従しやすく、ラグが少ない代わりにノイズも拾いやすくて不便だったり、短期のSMA は、大きな価格データが計算期間から抜ける際の変動が邪魔になったりして…、、今のところ、私にとってはEMAの系統が一番扱いやすいデータ列を作り出します..。
(ブレイクアウトの検出・警戒が目的なら、ラグの少ない方が断然有利です...念のため。


私だけが EMA は素晴らしいと言ってるのではなく、jim sloman さんもOcean Theory Bookの文中で EMA を高く評価されています。彼は、EMAの改良版として NMA を作られたのですが、NMA は個性的すぎるので汎用的ではないかもしれません。

…(気が向けば)続く。